セールスコピーを学んでいると、必ずぶつかる壁があります。それが「ベネフィット」の壁です。 「機能(スペック)」ではなく、それによって得られる「良いこと(ベネフィット)」を書け。そう教わって、一生懸命テンプレートに当てはめてみる。

「この時短ツールを使えば、作業が1時間早くなります。空いた時間で副業ができたり、家族と過ごせたりします」

……悪くはない。でも、どこか「よそよそしい」感じがしませんか? 書いていても「本当にこれで響くのかな?」と半信半疑になり、実際にリリースしてみても、反応はイマイチ。

実は、売れないベネフィットには共通点があります。

それは、言葉が「辞書的な説明」になっていて、読み手の「リアルな生活」に入り込めていないことです。

本稿では、小難しい理屈を抜きにして、読み手の心を一瞬で掴み、「これ、私のことだ!」と思わせるベネフィットの作り方を、徹底的に具体的に解説します。

1. なぜ「型通り」のベネフィットはスルーされるのか?

「頭」で考えた言葉は、スマホをスクロールする指を止められない

多くのライターがやってしまうのが、論理のパズルです。 「商品がすごい(特徴)」→「だから便利(メリット)」→「だから幸せ(ベネフィット)」と、頭の中だけで言葉を変換してしまう。

しかし、読み手はあなたの文章を「解読」したいわけではありません。 現代の読者は、仕事の合間や、移動中の電車の中で、なんとなくスマホを眺めています。そんなぼんやりした頭に、「家族との団らん」といった抽象的な言葉を投げても、脳の表面を滑っていくだけです。

「手垢のついた表現」は、風景と同化する

「自由になれる」「自信がつく」「人生が変わる」

こうしたキラキラした言葉は、あちこちで使われすぎていて、もはや「ノイズ」として処理されてしまいます。読者の脳は、予測可能な言葉を自動的にシャットアウトするようにできているからです。

必要なのは、論理的な正しさではなく、「思わず光景を想像してしまうほどの具体性」です。

2.実践:ベネフィットを「映像」にアップデートする

具体的にどう書き換えればいいのか。

現場でよくある事例を使って、「普通のベネフィット」を「刺さるベネフィット」へ昇華させてみます。

【事例1】オンライン英会話スクールの場合

普通のベネフィット: 「英語がペラペラになり、海外旅行がもっと楽しくなります。現地の人とも自信を持って話せます」

“映像”にしたベネフィット: 「注文した料理と違うものが届いても、ニコッと笑って『これ、頼んだものと違いますよ』と自然に伝えられる。冷や汗をかきながらメニューを指差していた自分は、もうそこにはいません。現地の店員さんと一言二言ジョークを交わし、海外の風を感じながら、ゆったりとディナーを味わう。そんな『対等な自分』に、少しだけ誇らしくなるはずです」

【事例2】住宅リフォーム(断熱改修)の場合

普通のベネフィット: 「断熱性能が上がることで、冬でも暖かく過ごせます。光熱費も安くなり、健康的な生活が送れます」

“映像”にしたベネフィット: 「冬の朝、布団から出る時の『気合』がいらなくなります。冷え切った廊下にビクビクしながら歩く必要もありません。薄手のシャツ一枚で、淹れたてのコーヒーを楽しみながら新聞をめくる。足元から伝わる冷たさに悩まされることなく、家族との会話に集中できる。そんな『穏やかな朝のルーティン』が、これからのあなたの日常になります」

なぜ、後者の方が「欲しく」なるのか?

それは、読者の「今現在の悩み」と「理想の1シーン」を具体的に繋いでいるからです。

「英語が話せる」という概念を売るのではなく、「海外のレストランで堂々としている自分」という映像をプレゼントしている。これが、成約率を分ける決定的な差になります。

3. ベネフィット上達法:まずは「下手な絵」を思い浮かべる

ここで、私がずっと個人的に実践してきた、誰でもできる上達法をお伝えします。

それが、「ベネフィットを享受している人の絵を、頭の中で描いてみる(あるいは紙にラフ画を描く)」ことです。

1
顧客の「一番しんどい瞬間」を思い出す

その商品を買う前の顧客は、どんな顔をしていますか?

・夜遅く、パソコンの前で「まだ終わらないのか……」と目をこすっている姿
・鏡の前で、自分の体型を見て溜息をついている姿

この「暗い顔」をまずイメージします。

2
悩みが解決した後の「ふとした一瞬」を描く

ここが重要です。大成功している姿ではなく、「日常の中の、ちょっとした変化」を描いてください。

・仕事が早く終わり、久しぶりに保育園のお迎えに間に合って、子供がパッと笑顔になった瞬間
・キツかったズボンがスッと入り、思わず「おっ」と独り言を漏らす瞬間

3
その絵を「そのまま」言葉にする

絵を描いたら、それを実況中継するように文章にします。

「お迎えに間に合います」と書くのではなく、「パパだ!と駆け寄ってくる子供の笑顔を、夕暮れの園庭で受け止める。そんな時間を、週に一度は作れるようになります」と書く。

絵を描くことで、言葉に「体温」が宿ります。

テンプレートに沿って書くとつまらなくなるのは、そこに「生身の人間」がいないからです。

4. Googleの評価(SEO)にも直結する「具体性」の力

この「映像を描くライティング」は、SEOの観点からも非常に強力です。

Googleの評価基準である「E-E-A-T(専門性・経験・権威性・信頼性)」や「ヘルプフルコンテンツシステム」は、要するに「その記事は、読者の悩みを本当に解決し、満足させているか?」を見ています。

  • 独自性(Experience): あなたが想像した独自の「光景」は、他のサイトのコピペでは決して作れません。これがGoogleに「オリジナルで価値のあるコンテンツ」と判断される要因になります。
  • 読了率の向上: 具体的なエピソードや光景が浮かぶ文章は、最後まで読まれます。滞在時間が延びることで、検索順位の向上に繋がります。

誰にでも書ける「一般的な正解」を並べるよりも、一人の読者の心に深く刺さる「具体的な未来」を描く方が、結果としてSEOでも勝てるのです。

5.「売るための文章」から「背中を押す文章」へ

ベネフィットを考えるのが苦しいときは、「何かすごいことを言わなきゃ」と自分にプレッシャーをかけているときかもしれません。

でも、本当に読者が求めているのは、派手な成功法則ではありません。

「明日、今よりちょっとだけ良い気分で過ごせている自分」の姿です。

あなたの役目は、商品を売ることそのものではなく、読者が「あ、この未来なら手に入れてみたいかも」と一歩踏み出すための、優しいガイドをすること。

もし言葉に詰まったら、一度ペンを置いて、深呼吸をしてみてください。

あなたの商品を手にした人が、どんな顔で、どんな風に笑っているのか。 その絵が浮かんできたら、あとはそれを文字にするだけです。